Past future: a traffic light

Hiro CHIBA

Hiro CHIBA
千葉尋

Past future: a traffic light

どうしてあれほど信号機に登りたかったのか。僅かにしか想起できない情動が、確かにあったことだけを覚えている。過去の私の代わりに信号機に上る、「他人」だった彼は、現実では夕日の写真を撮っていた。信号機から撮る夕日の写真は、地上から撮るものよりもなにか素敵だろうか。 本作は、Past future のシリーズの一作。子供の頃に思い描いた、自分の能力を無視した期待。空中散歩、小人化、巨大化、超高所に登ることなど、憧憬とともに想起される、物語や空想、夢の記憶を、標本として保存している。 人間は人生の1/3を眠って過ごすのだから、非現実の記憶は、経験の記憶と同じ割合以上に、人類に影響しているはずではないだろうか。 過去の夢を体現するのは、撮りためた写真に写り込んだ、二度と会わないだろう他人にしている。非現実の中で思い起こす限り、少なくとも彼らとの一期一会を再確認できる。 制作時は、記憶と空想のレイヤーを分けて、背景、人物、傘の3枚の図像を重ねて現像している。

H:660mm W:509mm D:30mm W(重量):2kg

2022
ブロッコリー、レジン、アクリル板