Shinjiro Tanaka
田中紳次郎
Thinking Animals
かんがえるけもの
この作品とタイトルを見たときに、何を思っただろうか。全体を見たときには、この風景はどこなのか?ジャングルの中に獣がどこかに隠れているのか?と思ったかもしれない。近くで見たときには、これはどういう素材や方法で描いているのか?と技術的なことを思ったかもしれない。しかし、探してもこの画面の中に獣はいないし、ここはジャングルでもない。モチーフのことを言えば、これは拙宅の庭にある人工的に植えられた植物を、写真というデバイスで記録し、それを見て描いたものだ。そしてこれを見ているあなたも、この何重ものフィルターを通した上で、さらに自分の想像で持って解釈をしようとする。このように、人は見たいようにしか物事を見る事ができない。そして、それこそが人間が人間たる所以であるとも言える。つまり、「かんがえるけもの」とは、制作者はもとより、鑑賞者自身のことを指す。情報は溢れ、人はますます表面的な刺激を求め、消費は加速してきている。その反面、情報を咀嚼し、どう自分は考えるかということには鈍感になってきている。短期的な利益の有無に惑わされず、一見無駄とも思えるもの(日常)を味わい、楽しむきっかけになれば幸いである。
H:803mm W:606mm D:25mm W(重量):1kg
2022
キャンバスにアクリル、インク