生成時計

Experiment Tokyo

生成時計

本作は時計を再定義したメディアアートである。壁に掛けられた『生成時計』は一見、ディスプレイに表示された風景画に見える。しかし、よく目を凝らすと実はこれは時計であり、現在時刻が示されているとわかる。絵の中には長針や短針、12等分されたアワーマーカーが巧妙に描かれている。表示されている画は画像生成AIによって1分ごとに生成されたもので、描かれているのはいまこの瞬間に朝を迎えている地球上の都市の風景である。 毎分、違った画が生成されるため、同じ画像を見ることができるのは今、作品の前にいる人だけとなる。その構造は、見る者に時間の一回性を印象付ける。これは近代工業社会で発明された機械時計が時間を均質的で繰り返されるものだとみなしているのとは対照的である。 また、世界中の都市の風景を生成することで、時間だけでなく空間的広がりも意識させるインターフェースとなっている。グローバル化した社会を営む上で、みな一つの惑星の上に生きている感覚を獲得するのは重要だ。本作は現在時刻を、風景の中の”見えない線”で翻訳することで「今・ここの地球に生きていると体感するためのメディア」となることを企図している。
H: 409.56mm W: 409.56mm D: 12.6mm W: 3kg
2023
Digital Art, AI
デジタル


実験東京

実験東京はAIエンジニアとデザイナーの2人が2023年に設立したAIアートコレクティブである。
計算機科学において必要がないかもしれない処理を先に行うことを”投機的実行”(Speculative Execution)と呼ぶように、世界に必要になるかもしれない実験を先に行うことを”投機的実験”(Speculative Experiment)と彼らは定義する。常に更新され続ける都市、東京を実験場とし、急速に発展するテクノロジーを使った作品を制作している。
AIエンジニアの安野貴博は東京大学工学部でAIを専攻した後、英Royal College of Artにて準修士を取得。技術と物語を主なテーマに、AIに関する作品の制作やスタートアップの創業を行なっている。
デザイナーの山根有紀也は、東京大学にて薬学を専攻、副専攻としてメディア学を学ぶ。薬学からデザインまで、人の知覚や認知を変えるメカニズムを探求している。
受賞歴としては「幻視影絵」(2023)でアジアデジタルアートアワード2023の福岡県知事賞およびインタラクティブアート部門大賞など